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 菱湖流真書 v0.04

-流麗な近代楷書の礎-

 幕末の三筆の一人に数えられた「巻 菱湖」。
楷行草から隷書篆書まであらゆる書に精通していたそうですが、特に得意な分野は楷書だったそうです。

 「菱湖流」の楷書の特徴は、唐代の書を踏襲したキリッとした鋭さと、菱湖らしい流麗かつ大胆な筆致でした。
この書風は一世を風靡したようで、菱湖の没後、明治政府の公式書体にまで選定されました。
しかもこの菱湖流楷書、明治時代で終わることなく、今日も「将棋駒」の超定番書体として生き残り続けているのです。

 100年以上にわたって人々を魅了し続ける「菱湖流」。
楷書のくせに筆の流れを感じさせたリ、篆書をモチーフにしたような独特な略しかたであったり、すっかり私もハマってしまいました。
そのうえ、漢字のサンプル数も多いので、頑張ればそこそこまともなフォント作れるんじゃないかと不覚にも考えて企画がスタートするのです。

 現在、まだ600字ぐらいです。
新字体との兼ね合いはどうするか、仮名文字はどうするか、まだ決めてません。


ダウンロード(TTF)
(初稿:2017年3月30日)
(最終:2017年5月12日)

以下制作風景


 営団明朝

-現代風のようで古めかしい硬質な明朝体-

 帝都高速度交通営団(現・東京メトロ)の代表的な書体といえば、やや扁平に設計された『ゴシック4550』であることは有名です。
しかし、『ゴシック4550』の登場以前の1960年代においては、案内板から駅名標に至るまで明朝体で書かれていた時期があったそうです。
それを、通称『営団明朝』と呼んでいるのですけれども、この明朝体には目立った特徴がやや散見されました。
その特徴というべき箇所を、以下に箇条書きで説明いたします。
  • 字形が『ゴシック4550』同様に、やや扁平に設計されている
  • サインシステムとして用いられた『営団明朝』は、その性格上なのか『平成明朝体』のようにシャープなエレメントを持ち、字のフトコロが広い
  • そのわりに、『駅』などのウマヘンの字形にみられる、エレメント同士がぶつかった箇所もあり、漢字本来の伸びやかさを優先したかのような設計もあるみたい
  • 『前』の字形にみられる、『月』部分は隷書体のようにハラっている
  • ハネアゲ、左ハライが異様に鋭い
  • 曲げハネ、タスキハネのハネの方向は、普通の明朝体よりも右寄り
  • ここまで特徴を並べておきながら申し訳ないですが、『営団明朝』は恐らく職人の手書きであることから、正式な字形は存在していない
  • もはや絶滅危惧種(というかしたのかも)なので、資料がほとんどなく、ロマンがある


上:営団銀座駅に奇跡的に残された貴重な営団明朝
下:画像をもとに、なるべくソレっぽく再現したフォント(似ているかどうかはともかく……)

 つまり、骨格が現代風でありながら、どこか古臭い、私としてはツボな書体なのです。
とりあえず私がネットから拾った字形だけでもデジタル化できれば、自己満足ではございますがそこそこ史料的価値があるのではないかな、と……。

 もしも営団明朝の資料&写真をお持ちの方がいらっしゃいましたら、ぜひプリーズ……
■ダウンロード(TTF)
(初稿:2016年9月4日)

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